2025年初頭、DeepSeek-R1の登場は世界に衝撃を与えた。
「中国は、米国ほど大量の最新GPUを使えなくても、高性能なAIを作れるのではないか」
そんな疑問を世界に突きつけたからだ。
しかし、2026年8月現在の状況を見ると、さらに重要な変化が起きている。
Moonshot AIの「Kimi K3」、DeepSeekの「V4」、Alibabaの「Qwen3.8-Max」、Z.aiの「GLM-5.2」、MiniMaxの「M3」、ByteDanceの「Seed2.1」。中国から、一社ではなく複数のフロンティア級AIモデルが次々と登場している。
そして2026年8月13日には、DeepSeekが「DeepSeek-V4-Pro」の正式版を公開した。エージェント能力を大幅に強化し、OpenAIのResponses APIにもネイティブ対応するなど、単なるチャットAIではなく、長時間にわたって仕事を遂行するAIを強く意識したモデルとなっている。
さらに、そのわずか10日前の8月3日にはAlibabaが2.4兆パラメータの「Qwen3.8-Max」を発表。そのオープンウェイト版も8月中旬までに公開された。7月にはMoonshot AIが2.8兆パラメータのKimi K3を公開し、7月27日には実際のモデルウェイトも公開している。
もはや「DeepSeekだけが例外的に強い」という状況ではない。中国に、複数のフロンティアAI研究所からなる巨大な競争市場が形成され始めているのである。
Kimi K3は何がそれほど重要なのか
その象徴がKimi K3だ。Kimi K3は、総パラメータ数2.8兆、推論時に動作するアクティブパラメータ数1,040億のMixture-of-Expertsモデルで、100万トークンのコンテキスト、画像入力などのマルチモーダル機能を備えている。
重要なのは単純なモデルサイズではない。Kimi K3では「Kimi Delta Attention」と「Attention Residuals」という新しい構造を取り入れ、MoEも896の専門家のうち16だけを選択して動かす高い疎性を採用した。Moonshot AIは、前世代K2と比較して、計算資源を能力へ変換するスケーリング効率を約2.5倍改善したとしている。
つまり中国勢が取り組んでいるのは、「NVIDIAのGPUが少ないから、小さなモデルで我慢する」という話ではない。
限られた計算資源から、どこまで高い知能を取り出せるかという別のスケーリング競争なのである。
これは米中AI競争を見るうえで非常に重要なポイントだ。
そして8月、Alibabaも2.4兆パラメータへ
Kimi K3に続いてAlibabaが発表したQwen3.8-Maxも大きい。Qwen3.8-Maxは2.4兆パラメータ、アクティブパラメータ950億で、クラウド版では100万トークンのコンテキスト、画像入力、ツール利用などに対応する。Alibabaはこれを同社史上最も高性能なQwenモデルと位置づけている。
さらに重要なのは、これまで基本的に非公開だった「Qwen-Max」クラスのモデルについて、初めてウェイトを公開したことである。8月13日前後には、Qwen3.8-2.4T-A95BのウェイトがHugging Face上で実際に公開された。なお、クラウド版Qwen3.8-Maxには画像入力や標準100万トークンコンテキストなど追加機能があり、公開ウェイト版とクラウド版が完全に同一というわけではない。
この違いは小さく見えて、かなり重要だ。中国企業は、すべてを無料で公開しているわけではない。
強力な基盤部分は公開して世界中の開発者を取り込み、その上に商用クラウドや追加機能を載せて収益化する方向へ進んでいる。
これは、LinuxやAndroidにも似たエコシステム戦略である。Alibabaによれば、Qwenシリーズはすでに累計10億ダウンロードを超え、20万以上の派生モデルが作られている。
性能ランキングだけを見ていると、この数字の意味を見落とす。AIの覇権とは、最も賢いモデルを一つ作ることだけではない。世界中の開発者が、どのモデルを土台にソフトウェアを作るかという競争でもあるからだ。
DeepSeekも8月13日にV4-Pro正式版を投入
4月に公開されたV4 Previewでは、V4-Proが1.6兆パラメータ、アクティブ490億、V4-Flashが2840億パラメータ、アクティブ130億という構成だった。両モデルとも100万トークンに対応していた。
今回の正式版V4-Proでは特にエージェント能力が強化され、推論量をlow、high、maxなどから調整できるようになった。さらにOpenAI Responses APIへネイティブ対応し、Codexを含む既存の開発環境でDeepSeekを利用しやすくしている。
ここにも中国勢の戦略が表れている。OpenAIやAnthropicと異なる独自の開発環境へユーザーを囲い込むのではなく、「OpenAI向けに作ったシステムで、そのままDeepSeekも使えます」という方向へ進んでいる。
モデルそのものだけでなく、乗り換えコストを下げることまで競争力にしているのである。
「中国AIはとにかく安い」という時代にも変化
ただし、今回のDeepSeek V4-Proにはもう一つ興味深い変化がある。DeepSeekはV4-Pro正式公開と同時に、API料金の大幅改定を発表した。新料金は日本時間2026年8月17日から適用され、モデルや時間帯によって従来から50%〜1,100%程度上昇する。代わりにピーク時間とオフピーク時間を分け、オフピークでは料金を半額にする仕組みを導入する。
これは意外に重要なニュースだ。これまでDeepSeekは、「米国モデルに近い性能を驚異的な低価格で提供する企業」として知られてきた。
しかし、高性能AIを大規模に提供するには大量のGPU、データセンター、電力が必要になる。モデルが人気になればなるほど推論コストも増える。Kimi K3でも公開直後に需要が計算能力を上回り、Moonshot AIが一時的に新規サブスクリプション受付を停止する事態が起きている。
DeepSeek自身も大規模な資金調達、人員拡大、計算資源の増強へ動き始めている。Reutersによれば、同社は初の外部資金調達で74億ドルを集め、独自AIチップ開発の人員も拡充している。
つまり、中国AIにも米国AIと同じ問題が迫り始めている。AIはソフトウェア産業であると同時に、巨大な資本集約型産業になったのである。
ByteDanceはさらに「10兆パラメータ」を狙う
そして競争は、Kimi K3の2.8兆で終わりそうにない。2026年8月7日には、ByteDanceが最大10兆パラメータ規模の次世代モデルを開発しているとFinancial Timesが報じた。Reutersによるとモデルはまだ事前学習段階にあり、ByteDance自身はコメントしていないため、現時点では未確認の開発計画として扱う必要がある。
もちろん、パラメータ数が大きければ賢いという単純な関係ではない。しかし、このニュースが示しているのは中国企業が「効率化だけで米国に対抗する」段階から、効率化しながらモデル規模そのものも米国級まで引き上げる段階へ進もうとしていることだ。
ByteDanceには、Doubaoという巨大な消費者向けAIサービス、TikTokを含むコンテンツ事業、Volcano Engineというクラウド事業がある。研究成果をそのまま数億人規模のユーザーへ展開できる。これはAI研究所単体では持ちにくい大きな武器である。
中国AI最大の強さは「一社ではない」こと
現在の中国AI市場を見ると、それぞれの企業が違う強みを持っている。
- Moonshot AI — Kimi K3で巨大なオープンウェイト・フロンティアモデルを追求
- DeepSeek — 高い計算効率と低価格、推論、コーディングで攻める
- Alibaba — QwenとAlibaba Cloud、Eコマース、決済、業務システムを結び付ける
- ByteDance — 巨大な消費者基盤とコンテンツ、マルチモーダルAIを持つ
- Z.ai — GLM-5.2で長時間のエージェント処理とコーディングを強化
- MiniMax — M3は100万トークン、画像・動画入力、コンピューター操作に対応。7月31日には音声付き2K動画を生成できるH3も投入
ByteDanceのSeed2.1も、静的なベンチマークより実際の業務やエージェント作業を重視する設計を掲げている。
興味深いのは、ほぼ全社が同じ方向を向いていることだ。2025年までの競争は「質問に一番うまく答えるAI」を作る競争だった。2026年の競争は、
「コンピューターを使い、コードを書き、調査し、何百ステップもの作業を自律的に完了できるAI」を作る競争へ変わっている。
ただし、米国が負けたわけではない
ここは慎重に見る必要がある。中国AIが急速に追いついているからといって、「中国がすでに米国を追い越した」と結論づけるのは適切ではない。
米国側ではOpenAIのGPT-5.6 Sol、AnthropicのClaude Fable 5、Claude Opus 5などの非常に強力なモデルが存在する。OpenAIは7月9日にGPT-5.6を公開し、GPT-5.6 Solについてコーディング、知識労働、科学などで最先端性能を達成したとしている。Artificial Analysis Coding Agent Indexでは、最大推論設定のSolが80を記録した。
AnthropicもFable 5、Mythos 5、Sonnet 5、Opus 5を相次いで投入し、長時間自律動作するエージェントを強化している。
さらに米国にはNVIDIA、AMD、Broadcom、Google、Microsoft、Amazonといった半導体・クラウド・データセンター企業がある。最高性能の計算資源を調達し、それを数十万〜数百万GPU規模へ拡張する能力では、依然として米国が大きな優位を持つ。
したがって当面は、最高性能の天井を米国が押し上げ、中国が急速にその差を縮めながら安価な形・公開可能な形へ落としていくという構造が続く可能性が高い。
「米国=クローズド、中国=オープン」という図式も崩れた
前稿から最も大きく変わった点の一つがここだ。中国製オープンウェイトモデルの急速な普及を受け、米国企業も反撃を始めている。
Reutersは8月12日、MoonshotやZ.aiなど中国勢の低価格なオープンウェイトモデルが普及していることを受け、MetaやNVIDIAなど米国企業がオープンウェイトAIを強化していると報じた。Metaは8月10日に新しいオープンウェイトモデルを発表し、Mark Zuckerberg CEOも米国がオープンAI分野で中国へ対抗する必要性を改めて訴えている。
つまり、これからの競争は「米国のクローズドAI対中国のオープンAI」ではない。米国はOpenAI・Anthropicによる最高性能クローズドモデルと、Meta・NVIDIAなどによるオープンウェイトモデルという二正面作戦へ向かっている。中国もまた、Qwenのようにオープンウェイトを普及させつつ、その上に有料クラウドや独自機能を載せるハイブリッド戦略へ移っている。双方が互いの成功戦略を取り込み始めているのである。
中国の弱点は依然として半導体
では、何が中国の成長を止める可能性があるのか。最大の問題は依然として計算資源である。ただし、ここについても以前より状況は複雑になった。
現在の米国政策は「中国へ高性能GPUを一切輸出しない」という全面禁止ではない。米商務省BISは2026年1月、NVIDIA H200やAMD MI325Xなど一定のAIチップについて、安全保障条件を満たした場合には中国向け輸出許可を個別審査する政策へ変更した。実際、7月14日には米政府当局者が、少量ながらH200の中国向け出荷が始まったことを議会で明らかにしている。Alibaba、Tencent、ByteDanceなどを含む複数の中国企業が購入許可を受けている。
したがって現在の状況は「完全遮断」ではなく、米国が中国の利用可能な最先端計算資源の量と速度を管理する構造に近い。
一方、中国側ではHuaweiのAscend 950シリーズへの需要が急増している。DeepSeek V4がHuawei製AIチップ上で動作することが明らかになった後、Alibaba、ByteDance、TencentなどがAscend 950の追加調達へ動いたとReutersは報じている。
これは非常に重要な変化である。米国の輸出規制によって中国AIを止めようとすればするほど、中国にはNVIDIAから独立したAI半導体エコシステムを作る強い経済的動機が生まれる。短期的には輸出規制が中国の開発速度を下げる。しかし長期的には、中国独自の半導体、通信、AIフレームワーク、モデル、クラウドを一体化した巨大な技術圏を作る圧力として働く。ここに輸出規制の難しさがある。
「効率」で進んできた中国も、いずれ物量戦になる
DeepSeekやKimiが示した最大の教訓は、「計算資源が少なくてもアルゴリズムでかなり補える」ということだった。しかし、その効果には限界もある。
AIが実際に数億人へ使われるようになると、学習よりも推論に莫大な計算能力が必要になる。優れたモデルを一度作るだけでは足りない。毎日、数十億、数百億回の推論を処理しなければならない。Kimi K3の需要急増による能力不足やDeepSeekのAPI値上げは、その問題がすでに表面化し始めている例と見ることができる。
したがって米中AI競争の第二幕では、「誰が最も賢いモデルを作れるか」だけでなく、「誰がその知能を最も大量に供給できるか」が重要になる。
そして、その競争では再び半導体とデータセンターが主役になる。
最終的なボトルネックは電力になる
さらにその先には電力がある。IEAは、世界のデータセンター向け電力供給が2024年の約460TWhから2030年には1,000TWh以上へ増えると予測している。なかでも米国と中国だけで、2030年までの世界のデータセンター電力需要増加の約80%を占める見通しだ。
つまり米中AI競争とは、実はモデル開発競争であり、半導体製造競争であり、データセンター建設競争であり、そして発電所と送電網の建設競争でもある。
米国にはNVIDIAと世界最大級の資本市場がある。中国には巨大な製造業と、発電・送電インフラを国家規模で構築する能力がある。AIのアルゴリズムだけを比較していては、最終的な勝者は予測できない。
2026〜2027年は「性能差が経済的意味を失う」時期になる
ここから先は予測になる。2026年から2027年に起きる最大の変化は、米中モデルの性能差そのものより、その性能差に企業がどれだけお金を払う価値があるのかが問われることだろう。
仮に米国のトップモデルが100点、中国のオープンウェイトモデルが95点だったとする。生命科学や最先端研究、サイバーセキュリティなどでは、その5点の差に大きな価値がある。しかし、企業の問い合わせ対応、翻訳、文書作成、社内検索、一般的なプログラミングではどうだろうか。95点のAIが10分の1のコストで利用でき、自社サーバーでも動かせるなら、多くの企業は95点を選ぶ可能性がある。
この瞬間から競争は、「どちらが賢いか」ではなく「知能一単位をいくらで提供できるか」という経済競争になる。
これは中国勢が非常に強い領域である。
2027〜2028年は「モデル」より「エージェント」が主戦場になる
次に起きるのはモデル単体の価値低下だろう。現在すでに、OpenAI、Anthropic、Kimi、DeepSeek、Qwen、GLM、MiniMax、Seedのほぼすべてが長時間のエージェント能力を競っている。
これから重要になるのは、「このAIは何点のベンチマークを取ったか」ではなく、「会社から仕事を一つ渡したら、最後まで何%自力で終えられるか」になる。
数時間、数日という単位でAIが仕事を続け、ブラウザーを操作し、社内システムへログインし、コードを書き、テストし、メールを送り、資料を作り、必要なら別のAIを呼び出す。
この世界では基盤モデルそのものは「CPU」のような部品になる。企業価値の中心は、その上に構築されるエージェント、データ、業務フローへ移る可能性が高い。
そして中国には「物理世界」という大きな武器がある
さらに長期的に見ると、中国には米国とは異なる大きな強みがある。製造業である。EV、電池、ドローン、ロボット、スマートフォン、通信機器、工作機械、センサー。AIがデジタル空間から物理世界へ進出すると、これらすべてがAIの身体になる。
米国はクラウドとソフトウェアで圧倒的に強い。中国は物理的な製品を大量かつ安価に作る能力で強い。そのため2028年以降、デジタルエージェントでは米国、フィジカルAIでは中国という構図が生まれる可能性もある。
ロボット一台一台から現実世界のデータが集まり、そのデータでモデルを改善し、改善したモデルを再び数百万台のロボットへ配布する。この循環を最初に大規模化した国は、巨大な競争優位を得る。
中国にも「オープンであり続けられるか」という問題がある
中国のオープンウェイト戦略には、もう一つ大きな不確実性がある。中国政府自身が、最先端AIモデルの国外提供を制限する可能性である。Reutersは2026年7月、中国政府が最先端AIモデル技術の国外アクセスを制限する方法を検討していると報じた。
これは中国にとって難しい選択になる。モデルを公開すれば世界中に中国AIのエコシステムを広げられる。しかし、AIを国家安全保障上の戦略技術と考えれば、最高性能モデルを国外へ自由に提供したくないという論理も働く。米国も似た問題を抱えている。
つまり最終的には、米中双方で「AIを世界標準にするためには公開したい」という経済的利益と、「重要技術を国外へ渡したくない」という安全保障上の利益が衝突する。これは今後数年間のAI政策における最大のテーマの一つになるだろう。
世界は「米国AI圏」と「中国AI圏」に完全分裂するのか
完全な二分化にはならないと考える。むしろ現実の企業システムでは、複数のモデルを組み合わせる構造が広がる可能性が高い。
難しい研究にはGPT-5.6 SolやClaudeを使う。大量の定型処理にはDeepSeekを使う。社内サーバーではQwenやKimiを動かす。画像・動画では別の専門モデルを使う。処理内容、価格、機密性、速度に応じてAIを自動的に切り替える。
いわば「AIルーター」が企業システムの中心になる。
そうなれば最大の価値を持つのは、必ずしも最強モデルを作った会社ではない。複数のAIを安全に束ね、企業データ、権限管理、業務システムへ接続できる企業かもしれない。
日本企業は「米国か中国か」を選ばない方がいい
日本企業にとっては、この点が非常に重要である。OpenAIだけ。Anthropicだけ。NVIDIAだけ。あるいは中国製オープンウェイトだけ。どれか一社を前提としてシステムを作ることは、今後大きなリスクになる。
AIモデルの性能順位は数か月で入れ替わる。価格はさらに速く変わる。輸出規制やライセンスも変わる。必要なのは、モデルを交換できるシステムを最初から作っておくことだ。
なお、中国企業が公開したモデルを日本国内の自社サーバーで動かす場合、入力データが自動的に中国企業へ送信されるわけではない。一方で、公開されているのは多くの場合「モデルウェイト」であって、学習データや学習工程まで完全公開されたオープンソースソフトウェアとは異なる。
したがって、機密情報を扱う企業では、データの送信先だけでなく、ライセンス、安全性、サプライチェーン、モデル更新経路、地政学的リスクまで含めて判断する必要がある。中国モデルを米国クラウド上で稼働させるような構成も、今後増えていくだろう。
米国が「最も賢いAI」を、中国が「最も使われるAI」を作る可能性
2026年8月現在、米国には依然として大きな優位がある。最先端GPU。巨大なデータセンター。世界最大の資本市場。OpenAI、Anthropic、Googleなどのフロンティア研究所。そしてNVIDIAを中心とした強力なソフトウェアエコシステム。
したがって短期的には、最高性能のAIを作る競争では米国が優位を維持する可能性が高い。
しかし、中国は別の勝ち方を狙える。わずかに性能が低くても、安い。公開できる。改造できる。自社設備で動かせる。大量に導入できる。そして中国製ハードウェアや製品へ組み込める。
そうしたAIが世界中へ普及すれば、米国が最高性能を維持したまま、中国が世界で最も多く使われるAIを握るという構図も十分にあり得る。
最も賢いAIを作る競争と、最も広く使われるAIを作る競争は、必ずしも同じ勝者を生まない。
冒頭の問いに戻りたい。「中国は、米国ほど大量の最新GPUを使えなくても、高性能なAIを作れるのか」——その答えは、すでに出たと言っていい。問いはもう次へ移っている。誰がその知能を、どこまで安く、どこまで広く届けられるのか。
日本企業に求められているのは、この競争の勝者を当てることではない。どちらが勝っても動くシステムを、いま用意しておくことである。